日々精進

フロントガラスにしこたま前頭葉をぶつけた。

気が付いた時には病院のベッドだった。

フロントガラスにはひびが入っていた。

なのに頭には小さなたんこぶだけが残った。 生きていた。

 

神様のお役目が始まって二年ほどたった頃だった。

何もかも上手くいかなくなっていた。

お役目をするものとしても、人としても、すべてが駄目になっていた。

いろいろなことが解り、見え、聞こえ、そのせいで仕事も出来なくなっていた。

 

神はこの事故であの世に連れて行こうとしたのかもしれない。

事故の後、私は様々な記憶を失った。

それとともに何よりも様々な感情を亡くしたように思う。

 

あれから十数年、記憶のほとんどは戻ったが、どうしても思い出せないこともある。

 

式神の中に、フクロウの爺さんがいる。

頭の中にわいたまきまきを食べてもらう。

まきまきは時々多く発生し、人の記憶を貪り食らう虫だ。

フクロウ神は、喜んで食べてくれる。

好物なのだ。

記憶で肥えた虫だから。

 

そして、ミミズクの神を呼び、ときまち草をおねだりする。

食べられた記憶を取り戻せる薬になるから。

そうやって、亡くした記憶が再び蘇る日を待っている。

大した記憶ではないに違いない。無いと不愉快なだけなのだ。

 

お役目はまだ終わっていない。

 

今は静かに祈り、

 

そして人としての生活を忘れないように日々精進するだけだ。